KAMAKURA(Album<No.8>)

2022年12月16日金曜日

アルバム サザンオールスターズ

t f B! P L

《KAMAKURA》 ★★★★★★★

発売日:1985/09/14
チャート最高位:1位(オリコン)
売上枚数:95.6万枚(再発盤等含む)

レビュー

8thアルバム。サザンのオリジナルアルバム初の2枚組であり、時間にして1,800時間(24時間換算で丸75日分)、半年ものレコーディング期間を費やした超大作。エネルギーいっぱいのアラサー桑田佳祐からあふれ出んばかりの、やりたい音楽、表現したいことをびっしり詰めこんだ結果、CD1枚では収まりきらなくなったといったところか。
実際、サザンの担当ディレクター、ビクターの高垣健氏も「曲もどんどんできて、全体のサウンドのコンセプトも固まってきた。それが1枚のアルバムに収まりきらなくなって、じゃあ、2枚組でやろうと決まったんです」(『ミュージック・マガジン』1986年11月号)と語っている。
音楽的には、前作「人気者で行こう」で試行錯誤したデジタル・ミュージックへのあくなき挑戦があるかと思えば、王道ポップあり、和風テイストの作品あり、先輩への辛口応援歌ありと、間口の広いサザンならではの作品群が並ぶ(その分、凡人の私には理解に苦しむ作品も多少まぎれている)。
また、2枚組という形式や、当時としては出し切った感のある雰囲気、この後サザンが一旦活動を休止することから、ビートルズの「ホワイト・アルバム」と比べる向きもある。
デジタルの部分では、YMOのアシスタントとして活動していた藤井丈司氏がレコーディングに参加したおかげで、「人気者で行こう」に比べても整っており、かつ挑戦的なサウンドが出来上がっている。藤井丈司氏と、この後桑田のソロ作品、「Keisuke Kuwata」以降、しばらく桑田作品に参加することとなる小林武史氏との出会いは、以降の桑田の音楽づくりに多大なる影響を与えている気がする。
個人的な感想として、全体を通して「陽」気な感じはなく、「陰」気な作品であり、やや重苦しく窮屈な印象を受けるアルバムだと思っている。ともすれば当時の「サザンオールスターズ」としての活動に桑田佳祐が限界を感じ、外に飛び立って挑戦してみたい、という鬱屈とした思いがあったのかもしれない、と邪推してしまう。その後の展開(KUWATA BAND、ソロ活動という充電期間を経て、サザンは第2期黄金期を迎える)を知っているからかもしれないが、そんな気がしてならない。
もう一つ、このアルバムに「陰」を感じる要因があるとすれば、2022年放送の「マツコの知らない世界」にゲスト出演した原由子が「(当時の)桑田はこれからどんなテーマで曲を作っていけばいいか迷っていたが、漫画『鎌倉ものがたり』に出会い、鎌倉の奥深い世界も表現していけたらと思ったそう」と発言したように、古戦場である鎌倉という土地に染みついた情念のようなものが、今までより深く表現されるようになったこともあるのかもしれない。
このことにより、後の楽曲には、他の作曲家が書かないような、何とも言えない哀愁が漂うものも多く散見されるようになり、桑田佳祐の作曲家としての幅がさらに広がったと見ることができるだろう。
私の青春真っ只中に(後追いではあるが)よく聴いた作品であるという個人的事情もあり、収録曲を聴くたびに甘くて切ない当時の空気感やにおいを思い出してしまうという、個人的には特別な作品である。

<DISC 1>

(1) Computer Children ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/藤井丈司

前作に引き続き、なかなかにインパクトのある曲を1曲目に持ってきたものである。特徴的なデジタルサウンドは、藤井氏が中心となって手掛けたようだが、まるで新しいおもちゃを手に入れた桑田が、頭に浮かんだアイデアをこれでもかと藤井氏に具現化してもらったかのように、今聴くと過剰なまでのアレンジが施されている。
歌詞カードには「スクラッチ、不規則なリズムなど、各種のEffect処理が行われています。未体験のサザン・サウンドをお楽しみ下さい。」とわざわざ書かれており、今までの「サザン・サウンド」を期待してレコードを回したリスナーが混乱しないような処置が施されていた。
ちょっとやり過ぎ感があり、宇宙に迷い込んじゃった感覚になるような曲だが、メロディはよく出来ていて、ライブでもわりと演奏される(最近でも2014の「ひつじだよ!全員集合」や2015の「おいしい葡萄の旅」でも演奏されている)ところを見ると、本人もお気に入りの一曲なのかもしれないし、ライブバージョンもなかなか聴きごたえがある。
歌詞は、「映像の彼方には悲しみの数字が友となる」「愛情の程度までデジタルの符号で計られる」など、デジタル時代におけるコミュニケーションのあり方等を予言するかのようなものであり、デジタルサウンドという新しい流行を取り入れつつも、アナログ的視点で世の中を見るバランス感覚はさすがである。

(2) 真昼の情景(このせまい野原いっぱい) ★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ&藤井丈司、大谷幸

このアルバムの楽曲の中で最も聴かない曲。アルバム発売後、セネガルの「トゥレ・クンダ」というグループとのジョイントライブなどをやってたことからも、桑田がアフリカの音楽に多少なりともインスピレーションを受けたものと思われる。
ところが、なぜか歌詞を見ると「moscow」と出てくるので、当時のソ連、共産主義的な内容を歌っているように見える。
冒頭の「真昼 真昼(正確には「真昼だ」と言ってるように聞こえるが)」と連呼するところを、アフリカ的な言葉に聞こえさせようとする意欲が見えるのだが、個人的にはそこがカッコ悪く聞こえてしまう。
インスピレーションを受けたというより、トゥレ・クンダとジョイントするので仕方なくそれっぽい曲を作ってみたという感じがしてならない。

(3) 古戦場で濡れん坊は昭和のHero ★★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

サザンに対し「海、夏、湘南」というパブリックイメージを持つ人が、待望の新作と思って期待して買ったアルバムのここまでの3曲を聴いて、当時のリアルファンは一体何を感じたのか、とても興味がある。宇宙的コンピュータミュージック、アフリカもどきを経て、3曲目がこのジメジメした奇妙な楽曲の登場だ。
私は後追いで聴いた世代で、このアルバムは高校時代にヘビロテした。ただ、当時の私にこの曲はまだ早かった。イントロ~Aメロの4/4拍子ではないノレないリズム、得体の知れない歌詞、お寺の裏にいるようなジメジメしたサウンド、どれをとっても私には理解しがたく、CDウオークマンで聴くときもスキップの対象となっていた。おそらく一生ちゃんと聴くことはないと思っていた。
ところが、である。2019年の通称「ふざけるなツアー」でこの曲が(私としては初めて)ライブで演奏されたのを聴いて、鳥肌が立った。ライブでの演出もあるのかもしれないが、何というか、円熟味を増したメンバーの演奏と桑田佳祐の歌い方が、ようやくこの曲のポテンシャルに追いついたという言い方が私の中では一番しっくりくるのだが、特に「極楽寺坂みどり」「君の面影はるか」の部分、うっとりしてしまった。
その後、前述した「マツコの知らない世界」での原坊の発言を聞いて、この曲の得体の知れなさに納得。
また、YouTubeチャンネル「松田弘のサザンビート」でも「最も聴かせたかった大好きな曲」として、この歌のドラム解説をやっていたが、リズムを刻むというより、絵を描くようにドラミングしているという弘のプレイは圧巻。特に間奏部分は原坊と二人でブースにこもりっきりで作り上げたそうで、「今でも原坊のピアノ演奏がないと絶対に叩けない」、「いまだに何拍子なのかよくわからない」というからすさまじい。
サザンの歌の世界は深い。深すぎる。一生ファンでいようと思った。

(4) 愛する女性とのすれ違い ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/藤井丈司

3球連続で超変則の変化球を投げた後、ようやくメロディも歌詞もど真ん中の直球。リスナーもいつものサザンサウンドにホッと胸をなでおろしたことだろう。
この辺、天性のバランサーのようなものが桑田には備わっているように思う。
ただこの曲、少し球速が遅いため、インパクトの薄い曲になっている。それでもライブではたまに演奏される(直近では2013の復活ライブが記憶にある)ので、嫌いな曲ではないのだろう。
あまりにその他の偉大な曲たちを知っているせいか、インパクトはないと感じてしまうが、よく聴くと素直にいい曲である。間奏のギターソロも味があっていい。元ギタリストの大森隆志は、技術こそ現サポメンの斎藤誠にかなわないが、時折こういった味のあるソロを弾くのが魅力的だ。

(5) 死体置場でロマンスを ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/大谷幸

マチルダBABY」「メリケン情緒は涙のカラー」といった活劇路線を踏襲した作品。今回は舞台を香港に移し、彼女と楽しんでいたところ突然拉致されて、白骨のある地下室に閉じ込められるといった内容で、結果、奥さんに浮気がバレたことが原因というコミカルなオチ。
コール&レスポンスの部分もあり、もっとライブでやってもいいような曲なのだが、最近はあまり聴かない。メロディもシンプルで聴きやすく、歌詞も桑田のものにしてはわかりやすく、ほどよくスケベで、ちょうどいいサザンワールドが楽しめる楽曲だ。

(6) 欲しくて欲しくてたまらない ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/藤井丈司

このころのサザンお得意のAOR風大人な一曲。徐々にフェードインするギターの音と吐息からのイントロ、エンディングのジャズ風のアレンジ等、秀逸なアレンジも光っている。3曲目までの異様な雰囲気が、ここに来てしっかり修正されている。
何度も書くが、この手の大人な楽曲は、桑田のヴォーカルが成熟した後のライブで聴くのが本当に味がある。この曲は2019の通称「ふざけるなツアー」で久々に演奏されたが、実にカッコよかった。

(7) Happy Birthday ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/藤井丈司

80年代ポップのニオイがプンプンするキラキラしたアレンジでお送りする、ハッピーなお誕生日ソング。歌詞も、「二人だけで誕生日に抱き合おう」的な無思想な感じがたまらなくいい。ただ、これといってインパクトもなく、何回か聴いたらお腹いっぱいになる。

(8) メロディ(Melody)<Single.23>


(9) 吉田拓郎の唄 ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/藤井丈司/新田一郎(管編曲)

今でこそ、優しくて大物なのに偉ぶらない気さくなおじさん風の桑田だが、もともと尖った気質を持っていることが、時々垣間見える。特に若くて血気盛んだったこの頃は、攻撃的な発言も多く、ライブでも言葉遣いが荒かった。
この年、『吉田拓郎ONE LAST NIGHT IN つま恋』というネーミングのライブが開催されたことなどから、引退がささやかれていた吉田拓郎に対するメッセージソングがこの歌。歌詞を見ればわかるが、「安らかに眠れ」「唄えぬお前に誰が酔う」「俺なら過去など語らない」「フォークソングのカス」など、かなり辛辣なメッセージが並んでいる。桑田はこの後にも、ひと騒動起こすことになるが、そちらは暗喩なのに対し、この曲はタイトルからして誰のことを歌っているかが明白だというのが斬新だ。
「お前の描いた詩(うた)は俺を不良(わる)くさせた」「自分も吞み込まれ」とあるように、自分も拓郎の影響下にあったことを認めた上で、「裏切られた気持ち」とあるように、「おい、こんな中途半端でやめるのかよ、ふざけんな」という、好きだったがゆえの強い失望感があったのかもしれない。その後もラジオなどで自分は吉田拓郎を良く聴いていたことや、ファンであったということをたびたび発言していることから、好きなミュージシャンにやめてほしくないという気持ちもあったのだと思われる。
それにしても直球すぎる歌詞のため、先輩の逆鱗に触れてもおかしくはないわけであるが、吉田拓郎と公式に騒動となることはなく、1988年にはこのメッセージが通じたのか、拓郎は引退を撤回する。二人はその後もお互いの才能を認め合い、2003年のサザンライブでは、当時ガン療養中の拓郎へ、歌詞をポジティブメッセージに変えてエールを送っている。吉田拓郎の先輩としての懐の深さ、そしてお互いの才能を認め合う大物同士の交流が心地良い。
名指しされていないにも関わらず、急に怒り出したとあるミュージシャンとは器が違うといったところか。
なお、この曲は歌詞がすべてで、楽曲は普通。

(10) 鎌倉物語 ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/大谷幸(弦編曲)

決して日本の楽器を使っているわけでもないのに、イントロの雰囲気から古都のイメージをものの見事に表現した素晴らしいアレンジ。
後にサザンでライブをやることになる「建長寺」の隣にある鎌倉学園高校出身の桑田ならではというか、古都の雰囲気が体に染みついた人間でないと書けないようなサウンドだと感じる。
鎌倉を舞台にした少し切なく悲しい恋心を原坊が独特のヴォーカルで歌い上げる。当時、原坊は妊娠しており、スタジオに来れなかったため、自宅に機材車を横付けしてレコーディングしたというのはファンの間では有名な話。
序盤から少し疲れるほどの異様な雰囲気で始まったこの大作アルバムは、前半のハーフタイム直前で「いつものサザン」感を全開にした、落ち着いた雰囲気で折り返すことになる。


<DISC 2>

(1) 顔 ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ・藤井丈司

さて、前半終了間際にようやく落ち着いた雰囲気になったこのアルバムも、後半に入りまた一風変わった曲からスタートする。
イントロのリズムを表拍だと思って聴いていくと、歌に入った途端に今まで表だと思っていた拍が裏拍に変わり(厳密に言うと変わったわけではないのかもしれないが、そう聴こえる)スカのようなビートになる。(このことは、松田弘のYou Tube動画「サザンビート」の第5回内でも語られており、私だけじゃなかったんだと安堵した。)
この年代頃まで桑田のお得意だったレゲエ調の雰囲気+デジタルサウンドという、本当に変わったというか、変な曲だが、なんか耳に残る、やみつきになる曲。
歌詞も「この顔でモテたら面白い」など自分の容姿をディスるというわけのわからなさ。
長らくライブで聴くこともなかった曲だが、「真夏の大感謝祭」や「おいしい葡萄の旅」などで思い出したように演奏されている。

(2)Bye Bye My Love(U are the one)<Single.22>


(3)Brown Cherry ★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/藤井丈司/新田一郎(管編曲)

エロい歌詞をハードな曲調に載せて、英語っぽく歌っているという、冷たい言い方をすればただそれだけの歌。
ガナるような歌い方も特に魅力的には聞こえず、発売直後のライブ以外で演奏されているのを聴いたことがないので、ほとんど聴くことはない。
ただ、ベストアルバム「Happy」になぜか収録されている。
この曲から、「最後の日射病」までの流れがあまり好きではなく、ここにもう少しいい曲があれば、このアルバムはもっと評価が高かったのに、ともったいなく感じる。

(4)Please! ★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/原田末秋

この時期のAOR風のけだるいサザンの楽曲は、全般的に嫌いではないのだが、この曲に関しては、曲自体に力がなく、インパクトも弱いという点で、ただダラダラと長い曲、という印象しかない。「女のカッパ」に近い楽曲だが、それよりもさらに印象は弱い。
あくまでも推測だが、この手の曲は演奏している側が気持ちよくなるタイプのものだと思われる。ムクちゃんのベースなんかはいい鳴り方をしているし。ただ、演奏の素人が聴いても魅力的には聞こえない点で、演者と聴き手のテンションが乖離する曲なのだと感じる。ただ、この曲はライブでも演奏された記録をほとんど見つけられないので、もしかすると演者側としても、失敗作だと思っているのかもしれない。

(5)星空のビリー・ホリデイ ★★★★

作詞 桑田佳祐
作曲 桑田佳祐/八木正生
編曲 八木正生

ファンの中でも好きだという人は少なからずいる曲だが、私はあまり好んでは聴かない。
ビリー・ホリデイという歌手にこれといった思い入れもないので、歌詞については何も響くものはないし、曲も壮大風に聴こえるだけで、カノン風のコードに載せたそれほどインパクトのないものでBメロの転調部分は「Oh!クラウディア」の方がずっといい。

(6)最後の日射病 ★

作詞・作曲 関口和之
編曲 サザンオールスターズ/大谷幸

ひょうたんからこま」、「ムクが泣く」、「南たいへいよ音頭」に続くムクちゃんの作品。
桑田の英語っぽい歌詞を意識したのか、「Hi! lifeは絶頂(やま)ね Hi!太陽は母(ママ)ね」と意味不明な歌詞から始まるが、全く良くない。
しかし、ちゃんと自分の方向性に気づいたのか、このまま桑田の背中を追っかけることなく、ウクレレというソロ活動の居場所を見つけ、サザンではベーシストに徹することとしたのはさすがムクちゃん。

(7)夕陽に別れを告げて~メリーゴーランド ★★★★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/大谷幸

思えばこれまでのサザンは、スローテンポのバラード王道ナンバーは数多くあったが、こういったミディアムテンポで、かつ胸を切なくさせるような、「これぞ王道サザン」的な楽曲は、実はあるようでなかった気がする。
桑田の実力なら1日でさらっと書けてしまうのではないかと聴き手に思わせるような、非常にシンプルな構成の楽曲なのだが、何というか、この人にしか出せない切なさスパイスでふんだんに味付けされたキャッチーなメロディに、多くの日本人が心を奪われる。
この曲の成功体験により、後の「YOU」「あなただけを」「可愛いミーナ」といった、中期以降の王道桑田ポップスが生まれていく礎になったような気がしてならない。楽曲自体の良さももちろんだが、桑田にとってマイルストーンとなるような曲だという印象を持っている(勝手に持ってるだけだが)ことから、★を多めにつけさせていただいた。
歌詞は「Ya Ya(あの時代を忘れない)」に次ぐ青春想い出ソングであり、30代という節目を目前にし、回顧的な気持ちになっていたのかもしれない。
楽曲的な評価では、サビの「She was is love with me one day,Oh yeah」の部分がカッコよすぎて、カラオケで歌うのも気持ちいい。ラスサビのエレピのみの部分から、ヴォーカル終わりにイントロと同じフレーズに戻るラストもいい。そこで歌う桑田の裏声も大好きだし、ライブで聴けばほぼ100%涙がこぼれちゃう。
なお、最後に「メリーゴーランド」のメドレー部分がくっついている意図だけがよくわからない。

(8)怪物君の空 ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ・藤井丈司

楽曲的にはA面(DISC1)5曲目の「死体置場でロマンスを」系列の軽快ロックチューン。「オロナミンC」のCMソングとして使われていたそう。
ファンタジー風でもあるが、反戦歌っぽいニオイのする歌詞は、当時の何らかの時代背景に触発されたものなのか。
「世を論ず前に手を」の部分の「手」には、歌詞カード上「テイ」と読み方が充てられており、同じように「子に託す未来に目を」の「目」は「メイ」と読ませている。あまり意味があるとは思えないのだが、こだわりがあったのだろう。この部分のバックのフレーズがカッコイくて好きだが、それ以外は軽快なナンバーではあるが、インパクトがあまりなく、頻繁に聴く曲ではない。
90年代はライブでもよく演奏されていたが、最近はあまり演奏される機会が少なくなった(最近では2014年のライブで演奏されている)。

(9)Long-haired Lady ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/八木正生

八木正生が編曲をする、ジャズ風の渋いナンバー。なぜか輪唱のように桑田のヴォーカルがずれて歌われている。歌詞も大人の情事を気怠く描くような汗臭いもので、あまりに渋すぎて、ライブで演奏されているのを聴いたことがない。今の桑田のヴォーカルで歌ったらどんな風に聴こえるか、一度聴いてみたい気もするが。1996年に行われたAct Against Aigs「夷撫悶汰レイトショー」で歌ったらピッタリだったのではないか。

(10)悲しみはメリーゴーランド ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ/大谷幸

意欲作かつ大作である本作のラストを飾るには、あまりに悲しくてさみしい曲。7曲目「夕陽に別れを告げて」で一瞬登場したメドレー部分のフルコーラスバージョン。
楽曲単体で聴くというよりは、このアルバムの一連の流れの中で聴くというのが正しい聴き方のように思う。ただ、発売当初や90年代前半のライブでは、単体で演奏されたりもしている。
「名前さえ白い砂に埋めた」「隣の人が泣いてる」「帰る祖国(ばしょ)はここに決めた」などの歌詞から、日本と韓国の関係を歌っているようにも聞こえるが、「ピースとハイライト」騒動で桑田が炎上したときに、「LOVE KOREA」は話題になったが、この曲のことはあまり話題にならなかった。もちろん、桑田が極左であったり在日の立場でこの歌を歌ったわけでないことは、ファンなら言わずもがなであるが。

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