綺麗(Album<No.6>)

2022年1月9日日曜日

アルバム サザンオールスターズ

t f B! P L

《綺麗》 ★★★

発売日:1983/07/05
チャート最高位:1位(オリコン)
売上枚数:63.7万枚

レビュー

6thアルバム。正直、4thアルバム「ステレオ太陽族」と同じくらい聴かないアルバム。好きな曲は2曲目まで。あとはほとんど聴かない曲ばかり。幅の広い音楽を作るのが桑田のすばらしいところの一つであり、このアルバムも例に漏れずいろいろなタイプの楽曲がちりばめられているが、全体的に散漫とした印象もあり、一つ一つの楽曲もメロディラインやアレンジ含め、心に残るものがない。この次のアルバムが名作なだけに、過渡期だったととらえることとしよう。

(1) マチルダBABY ★★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

この頃、デジタルミュージックの過渡期で、桑田もその可能性に大いに影響されている。「KAMAKURA」あたりまでは、かなり積極的にデジタルを取り入れようと試行錯誤する時期が続く。シンセサイザーから始まるイントロ(原由子の名作イントロ(2022年10月放送「SONGS」より)の1つ)から、松田弘のドラムに入る始まりは最高にカッコイイ。ライブで演奏される頻度もかなり高く、サビの終わりの「No no no…」の後に「ドカーン!」と爆発音がなり、炎が噴き出す演出はおなじみだ。ライブでは最高に盛り上がるので、その後にCD音源を聴くと迫力に欠けるところはあるが、十分に楽しめる。なお、この曲の路線は、後発の「怪物君の空」「メリケン情緒は涙のカラー」「死体置場でロマンスを」といった名曲につながっていく。

(2) 赤い炎の女 ★★★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

個人的にはこのアルバムNo.1ソング。スパニッシュなイメージのラテン系ナンバーで、ドラムの弘さんのセンスの良さもあらためて垣間見えるし、間奏に入る大森のアコギギターソロも最高。ちなみにこのソロは、大森のベストプレイのいくつかに入るのではないだろうかと思うぐらい。初期サザンの楽曲の中でも非常に洗練された秀逸な楽曲の1つだと思う。ちなみに歌詞はレズビアンの性について歌ったものだと推測されるが、この洗練された楽曲を全く邪魔しないすばらしい当て方。桑田佳祐にしか書けない、ものすごい曲だ。

(3) かしの樹の下で ★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

中国残留孤児をテーマにした楽曲で、前作「NUDE MAN」収録の「流れる雲を追いかけて」に続く中国・満州関係の曲。1981年に初めて「残留孤児訪日調査団」が訪日したといった時代背景の中で、桑田自身、このニュースに深い思い入れがあったのだろうか。
桑田著「ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」においても「一つの記事を通して新聞の記事を見てるような~」と語っており、性欲全開の中高生男子のようだった桑田少年が、文字通り一皮むけて、時事問題をテーマに曲をつくるようになった記念すべき第一歩としては意義深い曲。ただ、楽曲としては特に見るべきものはない。

(4) 星降る夜のHARLOT ★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

何度も言うが、サザンにレゲエは合わない。それだけ。楽曲も演奏も少しずつレベルアップしてはいるのだが、特に響かない。個人的にレゲエという音楽があまり好きではないだけなのかもしれないが。レゲエファンは初期サザンのレゲエ作品にどういう感想を持つのか興味はある。

(5) ALLSTARS' JUNGO ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

こういう曲をツラっと入れてくるあたり、すごい。今聴いてもそれほど響かないのかもしれないが、この当時としてはこのジャングルビートと、ラップ風のヴォーカルはかなり斬新だったのではないだろうか。正直、ヴォーカルはあってもなくてもいい感じ。リズム隊の奏でる心地いいビートを身体で味わう、そんなタイプの曲。特に関口のベースがかなりいい。こういうベースも弾くんだなぁという印象。

(6) そんなヒロシに騙されて ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

私はピアノ」に続く、女性歌謡第2弾。このアルバムの1か月後、高田みづえがシングルでカバーし、30万枚近いヒットを飛ばしている。ベンチャーズ風のテケテケギターと間奏ギターソロ、ベッタベタの歌謡風メロディなど、桑田の中に流れる歌謡曲の血が一気に噴き出したような曲。ただ、正直それ以上でもそれ以下でもない。後の原ヴォーカルの楽曲には秀逸なものが多いだけに、それらから見るとやや劣る印象。

(7) NEVER FALL IN LOVE AGAIN ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

この頃の桑田はこういったAORっぽい大人の楽曲を好んでつくっており、個人的にもその路線は嫌いではないのだが、この曲はややダルすぎて、それほどピンと来ない。ライブでは、サザン活動休止後の「灼熱のマンピー!! G☆スポット解禁!!」(2013)で生演奏を初めて聴いたが、特に今の桑田ヴォーカルで聴いても響いては来なかった。

(8) YELLOW NEW YORKER ★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

勢いのあるロックナンバーだが、これといって特筆すべきものはなく、ほとんど聴かない曲。

(9) MICO ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

桑田は日本の先輩ミュージシャンをテーマとして、やや否定的ともとれる内容で、おせっかいなエールを送る楽曲をたまに書く。特に後の「吉田拓郎の唄」が有名だが、この歌もその一つ。対象となっている「MICO」とは、1960~70年代に独特の歌唱力で一世を風靡した歌手、弘田三枝子。コニー・フランシスの「VACATION」のカバーである「ヴァケイション」が有名で、歌詞にも登場する「人形の家」(1969)で日本レコード大賞歌唱賞を受賞している。歌詞からいくと、この「人形の家」の前までの弘田三枝子が桑田は好きだったようだ。
なお、この曲のアンサーソングとして、弘田はこの年「O-KAY」というシングルを出しており、弘田本人が作詞した歌詞には桑田やサザンを連想させるワードが散りばめられているほか、歌詞カードに手書きで「すてきな歌をうたってくれてありがとう。この気持ち何と言っていいかわからないくらいメチャクチャ最高だわよネ、オー佳!! MIEKO HIROTA」と書かれている。何とも粋なやりとりである。

(10) サラ・ジェーン ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

正直あまり聴かないアルバムだったので、このブログを書くためにあらためて聴いてみたが、「まだこんなところに、こんないい曲が隠れていたのか!?」という印象。桑田のヴォーカルも格段によく、特にAメロ部分の歌い方がうまい。惜しむらくはサビがいまいち盛り上がらないところで、そこが今まであまり私の耳に留まらなかった理由か。ぜひ現在の桑田のヴォーカルでライブ中に聴いてみたい一曲。

(11) 南たいへいよ音頭 ★

作詞・作曲 関口和之
編曲 サザンオールスターズ

この頃のアルバムに1曲だけ入っていた、桑田以外の作品シリーズ。今回選ばれたのはムクちゃんだが、この歌はまた今まで以上に酷い。これであれば前作「ムクが泣く」の方がまだ聴くべきところがあった。

(12) ALLSTARS' JUNGO (Instrumental) ★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

5曲目のインストバージョン。やっぱり桑田も「この曲、ヴォーカルいらないんじゃないか?」って思っていたのか。正直、入れるなら5曲目はなしで、こっちのバージョンを長くやった方がよかったと思う。

(13) EMANON <Single.18>

(14) 旅姿六人衆 ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

今となっては、新しいファンにとってはタイトルの意味がわからなくなってしまった曲。当時のサザンのライブのステージ・ディレクターをしていた水津雄二氏をはじめ、舞台の裏方さんたちに向けた感謝の歌であることは有名で、ファンでも好きだという人の多い曲だが、個人的にはそんなに好きではない。
2019年の「キミは見てくれが悪いんだからアホ丸出しでマイクを握ってろ」ツアーで「旅姿四十周年」として久々に演奏されたことは反響も大きかった。

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