タイニイ・バブルス(Album<No.3>)

2022年1月9日日曜日

アルバム サザンオールスターズ

t f B! P L

《タイニイ・バブルス》 ★★★★★

発売日:1980/03/02
チャート最高位:1位(オリコン)
売上枚数:39.8万枚

レビュー

3rdアルバム。当時「いとしのエリー」の大ヒットにより、TV出演などのメディア露出がものすごい忙しさとなり精神的に疲れてしまったサザンは、半年間TV出演を休業、レコーディングに専念する期間を設けた。そして、1月に1枚ずつ、計5枚のシングルを出すという「FIVE ROCK SHOW」という企画を打ち出す。その最中に発売されたアルバムである。

サザンはこのアルバムで初のオリコン1位を獲得することとなり、以降最新(2022年1月現在)アルバム「葡萄」までオリジナルアルバムはすべてオリコン1位を獲得している。また、桑田以外が初めてメインボーカルを勤めた曲が2曲も入っており、今までとは違った色を出している作品だ。このころ、TV露出を控えたせいかサザンオールスターズはセールス的には暗黒の時代を迎えるが、楽曲としてはメリハリのついた曲が多くなり桑田の作曲家としての才能もワンランクアップした印象がある。今までの素人っぽさが影をひそめ、プロとしてのサザンが顔を出しはじめている。

(1) ふたりだけのパーティー~Tiny Bubbles(type-A) ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
管・弦編曲 新田一郎

イントロのスライドギターが印象的なポップソング。スライドギターの腕前には定評のある桑田の音がカッコイイ。曲はメドレー形式になっており、泡の音ではじまるTiny Bubblesへと以降する。このつなぎもなかなか見事。なお、ふたりだけのパーティーに関しては、2003年の流石だ真夏ツアーでLIVEバージョンを披露しており、これがカッコイイので必見である。

(2) タバコ・ロードにセクシーばあちゃん ★★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
管・弦編曲 新田一郎

なんとも意味不明なタイトルだが、別れたじいちゃんともう1度会いたいというセクシーばあちゃんの切ない歌である(笑)。こんな歌を作るあたりはさすが桑田の発想力はすごい。そんな歌詞とは裏腹に、楽曲は超カッコイイR&B。ヒロシのリズムはもちろんのこと、関口のベースがカッコイイ。チョッパーも織り交ぜてファンキーな演奏を披露している。ハラボーのコーラスも「セクシーばあちゃん」って感じでカッコイイ(笑)。そしてなんと言っても桑田のヴォーカル。この手の歌はお手のものと言わんばかりの骨太ヴォーカルを聴かせる。先日の豊田スタジアムでの35周年ライブを見に行ったが、この曲が一番シビれた。曲の割に歌詞が…っていう意見もあるが、そこが桑田のいいところ。カッコいい曲にカッコいい歌詞をつけるのは誰でもできること、カッコいい曲に不釣り合いのこの歌詞を乗せてしまうところがこの当時の桑田の真骨頂である。

(3) Hey!Ryudo!(ヘイ!リュード!) ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
管・弦編曲 八木正生

タイトルはおもいっきりビートルズの「Hey Jude」のモジリ。リュードとは山口百恵などの曲を数多く手がけたことで知られる宇崎竜童氏のこと。ジャズピアニスト、八木正生氏がこの頃からサザンのアレンジャーとして参戦するようになり、桑田もその影響を受けて積極的にジャズサウンドに挑戦していた時期だ。曲調はスウィングジャズ。昔あったような「●●ショー」といった番組のオープニングテーマみたいなイメージ(?)。司会者が階段から降りてきてご挨拶みたいな(笑)。ちなみに宇崎氏もそうだが、後に「吉田拓郎の唄」や「MICO」(弘田美枝子)など、桑田には自身の歌に日本の先輩歌手を容赦なく登場させるクセがある。

(4) 私はピアノ ★★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
管・弦編曲 八木正生

サザンの楽曲で、桑田佳祐以外が初めてメインボーカルを取った記念すべき曲。曲調はジルバのリズムのモロ昭和歌謡路線。今にして思えば桑田の得意中の得意分野なのだが、この頃は「サザンはこんな曲も歌うのか?」と思ったことだろう。その後、この系列は「そんなヒロシに騙されて」「ポカンポカンと雨が降る」につながっていく。こういう曲をつくらせたら天下一品の桑田節が炸裂する。GSっぽいギターも秀逸。桑田とハラボーのコーラスも見事。素晴らしい作品である。この後、高田みづえがカバーしてシングルヒットした。今でこそほとんどないが、この頃の桑田は他の歌手への楽曲提供も盛んだった。

(5) 涙のアベニュー <Single.6>

(6) TO YOU ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
管・弦編曲 八木正生

跳ねるようなイントロで始まるポップなナンバー。あまり目立つ曲ではないが、たまに聴くと思わず口ずさんでしまうような良曲。当初、竹内まりやに歌ってもらおうと思って作ったということのようだが、確かに言われてみればそんな感じのさわやかな曲ではあるが、歌詞がちょっと竹内まりやには合わないかも(笑)

(7) 恋するマンスリー・デイ <Single.7>

(8) 松田の子守唄 ★★★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
弦・管編曲 新田一郎

ドラムス、松田弘の初ヴォーカル作品。桑田の声を聴く後だから余計にかもしれないが、ヒロシのヴォーカルはとてもキレイで透き通る声をしている。曲は非常にシンプルだが美しいメロディで、隠れた名曲だ。曲名は「竹田の子守唄」(民謡)のパクりと思われる。ライブでは2008年の「真夏の大感謝祭」でドラムを叩きながらサビの高音を熱唱しているヒロシの姿がとても感動的で、7万人の観客からもひときわ大きな拍手が沸いていた。

(9) C調言葉に御用心 <Single.5>

(10) Tiny Bubbles(type-B) ★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ

1曲目のラストに登場した「TYPE-A」のフルバージョン。カントリーロック調のナンバーで、桑田節が炸裂している。

(11) 働けロックバンド(Workin' for T.V.) ★★★★

作詞・作曲 桑田佳祐
編曲 サザンオールスターズ
管・弦編曲 八木正生

TV撮影等で精神的に追い詰められるほど多忙なスケジュールをこなしていた初期サザン。その頃の思いを「今なら話しても良かろ」と歌うスローロックナンバー。歌詞的にはサザン版『A Hard Day's Night』といったところか。個人的にはそんなに心に残る曲ではない。



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